大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和34年(ネ)389号 判決

京都市東山区鞘町通七条上る下堀詰町二六〇番地

控訴人

奥村寅吉

右訴訟代理人弁護士

酒見哲郎

京都市東山区清水五丁目一二七番地

被控訴人

東山税務署長

高田泉平

右指定代理人

藤井俊彦

松谷実

葛野俊一

上田精一

右当事者間の頭書の事件につき当裁判所は左のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人代理人は、「原判決を取消す。控訴人の昭和二十四年度所得税二〇〇、八二〇円の租税債務の存在しないことを確認する。被控訴人が昭和三十二年二月十三日控訴人名義京都下局九四七四番電話加入権に対してなした差押処分を取消す。訴訟費用は第一二番とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用、認否は左に附加するほか原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。

被控訴人代理人は、「本件滞納処分執行停止の取消処分の通知書は昭和三十一年十月五日控訴人宛普通郵便として発送し、右郵便はその頃控訴人に到達した。」と述べ、控訴人代理人は、右事実を否認した。

証拠として控訴人代理人は当審での証人中村精一郎の証言を援用、乙第七号証の成立を認め、被控訴人代理人は乙第七号証を提出した。

理由

控訴人の本訴請求は矢当であつて、その理由は左に附け加えるほか原判決記載の理由と同一であるからここにこれをを引用する。

控訴人援用の当審での証人中村精一郎の証言によるも、右認定を覆えすことはできない。

被控訴人から本件滞納処分執行停止の取消処分の通知書が昭和三十一年十月五日肩書下堀詰町の控訴人宛普通便として発送された事実は、この点に関する原審挙示の証拠と、被控訴人において滞納処分執行停止取消通知書及び同取消決議書に使用する用紙であることにつき争のない検乙第一号証の一乃至三及び成立に争のない乙第七号証を綜合してこれを認めることができ、右事実(右郵便の発信地及び受信地は同一市内である)に徴すれば、右郵便物はその頃控訴人方に到達したことを推定することができる。

以上の理由により控訴人の請求中租税債務の不存在確認を求める部分はこれを却下すべく、電話加入権差押処分の取消を求める部分はこれを棄却すべく、これと同旨の原判決は相当であるから民事訴訟法第三百八十四条に則り本件控訴を棄却し控訴費用の負担につき同法第八十九条を適用し主文のように判決する。

(裁判長裁判官 石井末一 裁判官 小西勝 裁判官 井野口勤)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例